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fragile love-----


1:いつか全てが無に帰るその日まで

戦争というのは人間による人間の破壊なのかもしれない。
手に余るほどの破壊兵器を使った戦争は、世界をカオスへと変え、やがて世界を新生させる。

人間は失わないと、何も見つけられない愚かな生き物なのだ。
だからこそ戦争を繰り返す。
失って、見つけて、また失って 堂堂巡りの不毛な行為。
虚無主義とは人間の本質なのではないか。

「人間の悲しい性だ」

そう言って、ジークハルトは眉を顰めた。

「ほう、お前も戦いに疲れたか?」
「そんなんじゃ、ない」
「じゃあ、どうしてそんな苛立っているんだ?」
「俺たちが今している事は、・・・近い未来必ず裏切られる
何の為に戦うのか。解らなくなった」
「そうか」

シュダは月の淡い光に誘われて窓から眺めた。
正円の月が煌々と漆黒の闇を照らしていた。

満月は人を狂わせる

そんな迷信をジークハルトの姿に重ねて少し可笑しく思った。
冷静で頭の切れる男がどうして今日に限ってマイっているのか。
何故今日が満月なのか。
よりによって彼はどうして俺の所に来たのか。

「シュダ。お前は世界はいつ平和になると思う」
「平和・・・・?」
「時を守るというのは、きっと俺が自覚しているよりずっと難しいのだ」

ジークハルトは瞳を細めて悲しげにシュダと向かい合った。
縋るように、
救いを求めて、
憂鬱なブルーの瞳が揺れる。

「ジーク、お前が本気で時を守るつもりならばその通りずっと難しいだろう」
「シュダ?」
「それを願うならばお前はこの世の生きる者全て殺さなくてはならないからな」

そしてその時初めて、世界に真の平和が生まれるのだ。

「な・・・んで」

伸ばされた手を振り払われて、
救いを打ち砕かれ、
ブルーの瞳は静かに閉じた

「憎しみを、其処から生まれる破壊を作り出すのは人間だ。
この世からあらゆる衆生が消えるまで争いは繰り返される。
ジーク、お前がそれを望むなら、まず俺を殺せばいいんだ」

シュダは口元に笑みを浮かべて、不愉快な笑みでジークハルトを責めた。
そのブルーの瞳に唇を寄せて、
下に滑らせてその口を塞いで、

「さぁ、俺を殺してみろ」

愛もまた、憎しみを生み出す最大のアンビバレンスなのだから

いつか全てが無に帰るその日まで、人間は憎しみから解放される日は来ないのだ

最後に失うのは自身で、見つけるものは何なのだろうか


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アレレ?なんでこんな重い話になっちゃったんだろう。
不思議だ。これ題ごとに別の話じゃなくて全部で一つの話になる予定です。
多分、後半になればもうちょっと幸せになる・・・はずww






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たいしたことないもの